家賃交渉とお金の流れ
契約金はどこへいく?

賃貸物件を借りる際に家賃交渉をしたことはありますか?私が初めて家を借りた時は右も左も分からず、不動産屋さんの提案するとおりに家を決めました。もちろん家賃交渉どころではありません。

その後、不動産関係の会社で働くことになり、今では家賃交渉もスムーズに行えるようになりました。交渉というと難しいように感じるかもしれませんが、契約金の内訳を知っていれば意外と簡単です。なぜ契約金の内訳を知っていると交渉がしやすいのでしょうか? 順を追って説明していきます。

まず、お金の流れを整理します。家を借りる際に契約金を支払いますよね。この契約金はどこへ流れて(支払われて)いくのでしょう?

契約金の行き先は3つに分けることができます。

  1. 貸主(物件の持ち主)へ・・・家賃、敷金、礼金
  2. 鍵交換代、火災保険料などは、それぞれの業者へ
  3. 不動産会社への仲介手数料

家を借りる場合、もっとも顔を合わせるのは不動産会社の営業マンです。ですから、契約金を不動産会社へ支払っているように感じるかもしれません。しかし、不動産会社に入るのは仲介手数料だけです。契約金の大半は不動産会社を経由して貸主と関連業者へ支払われます。

このように契約金は3者で分配されています。つまり、この中の誰に対して交渉するのか?何に対して値下げ交渉を行うのか?を、前もって決めておくといいのです。

値下げ交渉がしやすいのは、次の4つに対してです。

  1. 家賃
  2. 礼金
  3. 鍵交換代や火災保険
  4. 仲介手数料

では、実際に値下げ交渉するには、不動産会社の営業マンに、どのように言えば良いでしょうか? 具体例を挙げながら見ていきましょう。

家賃の値下げ交渉 貸主への交渉

家賃は、貸主へ支払われるお金です。貸主に向けて交渉しましょう。

よくある言い方だと、『もうちょっと安くならないですか?』ですが、これでは曖昧すぎて営業マンも困ってしまいます。より具体的に『あと2,000~3,000円くらい下がったら借りたいのですが、この物件は値下げ交渉できますか?』と聞いてみましょう。

『もうちょっと』という言い方は敬遠されやすい伝え方です。営業マンは仕事をいくつも抱えていますから、面倒な依頼は後回しにされてしまいます。いくら下がったら借りるのか、はっきり伝えましょう。

また、『どのくらいまでなら安くなりますか?』という質問もNGです。貸主としては、出来るだけ高くしておきたいですから、最安値を教えてくれません。また、営業マンと貸主はビジネスパートナーでもあります。こういった聞き方はよほど親しくないと失礼にあたりますので、営業マンも言わないのが普通です。

『2,000~3,000円』と少し幅を持たせたのは、少し多めに伝えておくと、『3,000円は下げたくないけど、2,000円ならいいかな』という心理が働くからです。下げて欲しい金額と、その500~1,000円くらい高めを伝えて、頼んでみましょう。

ここで1番大切なのは、『借りたい』という事がはっきり伝わるような言い方をすることです。『値下げしたら必ず入居してくれる』という安心感を持たせるようにすることで、OKを導きやすくなります。

ただし、コツの通りに伝えても、OKをもらえない場合もあります。 ・その物件を取得するための費用がかかりすぎた場合 ・前入居者の退去後の修繕に費用がかかりすぎた場合 ・『そもそも提示されている家賃でもって決めるべきだ』という考え方の貸主の場合 このような場合は、交渉のコツ以前の話になってしまいます。

逆に、長く入居者が決まっていない物件であれば、すぐに値下げに応じてくれるかもしれません。入居者がいなくても部屋の経費を支払わないといけないからです。このような個々の物件の背景や貸主側の事情を、営業マンに聞くことが出来たら、値下げ交渉ができそうか判断できるようになります。

礼金の値下げ交渉 貸主への交渉

敷金は、家賃滞納があった時や、退去時のルームクリーニング代を確実に回収するために、貸主が預かっておくお金です。退去時に、ルームクリーニング代を差し引いて返金されますから、値下げ交渉する意味はあまりありません。

礼金は、返金されません。貸主へのお礼のような、契約手数料のような感覚です。 敷金も礼金も「家賃の○ヵ月分」と値段が決められていますから、0.5ヵ月分でも礼金を安くしてもらえたら、かなりお得です。

例えば、『敷金も礼金も2ヵ月分ずつ』という物件であれば、 『敷金は2ヵ月分のままで、礼金は1ヵ月分か、1.5ヵ月分にしてもらえたら借りたいのですが、交渉してもらえませんか?』と、頼んでみましょう。

『1ヵ月分か1.5ヵ月分』と幅を持たせたのは、家賃の値下げ交渉の時と同じコツです。0.5ヵ月分の差と考えると、小さな差に思うかもしれませんが、例えば家賃70,000円であれば、35,000円もの差です。

交渉相手が貸主というのは家賃交渉と同じですから、そのコツも似ています。『安くなりませんか?』だけでは響きませんので、『借りたい』という気持ちを伝えることが重要です。

OKをもらえない場合のことも、家賃の時と同じです。物件の背景や、貸主側の事情によります。ダメだった場合は、他で値下げを頼めないか、方向転換して考えましょう。

鍵交換代や火災保険 関連業者への交渉

鍵交換代、火災保険料なども交渉の余地があります。家賃や礼金は貸主との交渉でした。鍵交換代・火災保険料は関連業者への交渉になります。

これらは、それぞれの業者へ支払われる実質の金額に、不動産会社への委託手数料、紹介手数料などが上乗せされていることがあります。上乗せといっても、数百円~数千円程度であることも多いので、不動産会社に手配をしてもらう前提だと、大幅な値下げは期待できません。実のところ、これらは入居者自身が手配してもいい場合が多いのです。自分で手配すれば、上乗せ手数料分を安く済ませることができます。

鍵交換代

『スペアキーを持ってきますので、自分で鍵交換業者を手配してもいいですか?』と交渉してみましょう。不動産会社としては、上乗せ手数料分の売上が減ることになりますが、仕事が減らせるので、快くOKしてくれることも多いです。街の鍵屋さんに頼んでみると、不動産会社からの見積もり金額との差額が分かります。

火災保険

『申込が完了したら、領収書など証明になるものを提出するので、自分で手配してもいいですか?』と交渉してみましょう。自動車保険や生命保険など、家族でお世話になっている保険屋さんなどに頼めると、不動産会社からの見積もり金額との差額が分かると思います。ただし、加入の証明になる領収書などは必ず提出しましょう。信用に関わります。

と、このように全部を入居者のほうで手配されると、不動産会社の手数料分の売上がゼロになってしまうので、営業マンから、『それだったら少し値段を調整しますので、こちらで手配します』と返答が来る可能性もあります。上乗せ手数料分を多少削ったとしても、ゼロになるよりマシだからです。そうなったら、入居者としては、自分で手配する手間がなくなり、値下げしてもらったことになります。

上乗せ手数料分を全く支払いたくなければ自分で手配すればいいですし、安くなれば頼みたいという場合は、営業マンの出方を見てみましょう。

不動産会社への仲介手数料

最後に不動産会社への仲介手数料についてです。

賃貸の仲介手数料は、『貸主からの手数料 + 入居者からの手数料 = 家賃の1ヵ月分まで』と、法律で決まっています。貸主と入居者が、どの程度の割合で支払うかは物件により違います。貸主が支払わず、入居者が100%支払うケースもあります。例えば次のような場合です。

貸主が強気に売り出している物件の場合(例えば新築だとか、駅近だとか)、貸主が、不動産会社に、『この物件は客付けしてもらっても仲介手数料は支払いません。』ということがあります。『仲介手数料がもらえるからこの物件を勧めてみよう』と思ってもらわなくても、入居希望者が集まりやすいからです。この場合は、貸主からの仲介手数料がゼロなので、入居者に家賃1ヵ月分の仲介手数料を請求してもいいことになります。

もし、仲介手数料が家賃の1ヵ月分で請求されていたら、『貸主さんからは、仲介手数料をもらえないのですか?』と聞いてみましょう。『そうなんです、この物件は、貸主さんからの仲介手数料は無しなんです。』と返答が来たら、『2,000~3,000円くらい、マケてもらえませんか?』と交渉してみましょう。

この交渉を受け入れてもらえるかは、営業マン次第です。仲介手数料=売上高が、営業マンのお給料に連動する場合が多いからです。もともとの家賃が安ければ、受け入れてもらいにくいですが、家賃がそれなりの金額であれば、受け入れてもらえる確率は上がります。 数千円マケても売上を上げることが出来るからです。

『貸主さんからは、仲介手数料をもらえないのですか?』の返答が、『貸主さんからは、広告料をもらいますよ』だったとしたら、それは、営業マンの勉強不足によるミスです。広告料というのは、名目を言い換えているだけで、実質は仲介手数料の意味合いです。

不動産業界は、社員の入社退社が多く、特に賃貸の営業マンの中には、新入りさんや、勉強不足の方も多いです。なので、『それなら、0.5ヵ月分でないといけないですよね?』と確認しましょう。このミス、とても多いので、『値下げ』ではなくても、入居者としては支払う金額が減るのは同じことなので、必ず注意すべきポイントです。

『貸主からの手数料 + 入居者からの手数料 = 家賃の1ヵ月分まで』 に当てはまっているか質問し、確認するようにしましょう。

まとめ:賃貸物件の値下げ交渉

以上が、家を借りる時に支払う契約金の流れと、値下げ交渉のポイントです。簡単におさらいしておきましょう。

家賃や礼金の値下げ交渉のポイント

金額は明確に伝えること。貸主側のことを考えた言い方(入居したいアピール!)をすること。

鍵交換代、火災保険料の値下げ交渉のポイント

自分で手配してもいいか聞いてみましょう。自分で手配することになれば、上乗せ手数料分、安くなるし、引き止められたら、上乗せ手数料を少し減らしてもらえるかも。

仲介手数料の値下げ交渉のポイント

貸主からの仲介手数料と、入居者であるあなたが支払う仲介手数料の合計が、家賃1ヵ月分以内になるかどうか、聞いてみましょう。営業マンのミスが多いポイントです。


賃貸物件を借りる際、不動産会社に契約金を支払うので、何に対してお金を支払っているのか分かりにくくないっています。ご自身が支払ったお金が何に対しての支払いなのか把握しておくと、値下げ交渉や契約のやり取りがスムーズに行えます。全てを交渉するのは難しいので、まず次のように聞くことから始めてみてください。

「○○円下げてくれたら、すぐに契約しますので、物件の持ち主さんに聞いてみてもらえませんか?」